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 研究背景 圧電素子を用いた制振
    世の中に存在する全ての構造物に振動の問題は付随する.各種機械装置,建築構造物,自動車や飛行機等の乗り物,宇宙構造物等がその代表である.時計や振動を利用した搬送装置のように振動を有効活用する機械装置も中には存在するが,一般的には振動によって工作等の精度が低下したり,構造物自体が破壊されたり,乗り物の場合は乗り心地が悪化したりする.よって,これらの振動を低減する技術が必要であり,近年の機械装置の高精度化の流れに乗って,その重要性はより高まっている.


Figure A.1  Model of vibration.

  振動を低減する手段には大別すると,振動源の除去,振動絶縁,振動制御の三つがあり,いずれも重要であるが,本研究では振動制御を取り上げた.振動制御とは,外力によって生じる主系の振動を抑制することである.ダンパや動吸振器を用いた制振が振動制御の代表であるが,従来の制振装置の多くは設置に大きなスペースを必要とするため,近年の制振対象物の小型化や軽量化により適用できない場合がある.また,意匠の観点から敬遠される場合もある.そこで,必要なスペースが小さい材料の一つとして圧電素子が注目されている.


Figure A.2  Three types of vibration suppression.

  圧電素子は外力によってひずみを与えると電圧が発生する圧電効果と,逆に電圧を加えるとひずみを生じる逆圧電効果の二種類の性質を持ち,前者を利用すればセンサーに,後者を利用すればアクチュエータになる.これらの性質を利用して,圧電素子に制御電圧を加えたり電子回路を接続したりすることで,はりや平板等の曲げ振動を抑える研究が進められているが,機械式の制振装置に比べて研究が進んでいない.その結果,圧電素子の持つ潜在能力の高さのわりに利用される機会が少ない.そこで,本研究では圧電素子を用いた制振に残されている課題をひとつずつ順に取り上げ,その解決方法を示した.以下にそれらの研究成果を示す.


Figure A.3  A kind of piezoelectric ceramics.

 研究成果1 圧電素子とLR回路を用いた受動制振の定点理論による最適設計
    圧電素子と電子回路を用いた受動制振の手法の一つとして,LR直列回路またはLR並列回路を用いる手法が提案されている.しかし,いずれの場合も抵抗の最適値を求める式が定点理論に則していない近似式である.そこで,本研究では定点理論に則した最適抵抗値を導出した.また,コンプライアンスでの最適値算出式のみでなく,モビリティとアクセレランスでの最適値算出式も同様に導出した.LR直列回路とLR並列回路を比較し,制振性能と最適インダクタンスの値がほぼ等しいことと,最適抵抗値が大きく異なることを解析的に示した.


Figure 1.1  Schematic diagram of the experimental apparatus.


Figure 1.2  Calculated and experimental results of frequency responses.

 研究成果2 インダクタンスを用いた圧電素子の電気機械結合係数の高精度な測定法
    圧電素子を用いた制振では,その制振性能が圧電素子の電気機械結合係数または等価剛性比によって決まる.電気機械結合係数と等価剛性比は一方を求めれば他方も算出することができ,支持条件等より理論値を求めることができるが,接着剤の剛性の影響等が原因で一般に理論値と実測値は一致しない.そこで実測が不可欠になるが,過去に提案されている実測方法では,計測の誤差によって精度が不十分になる場合がある.そこで,本研究では圧電素子にインダクタンスを接続し,その時に現れる二つの共振振動数を用いてそれらの値を求める手法を提案し,電気機械結合係数が小さいために従来の方法では精度が不十分になる場合でも,数値計算と結果がほぼ一致する高精度な値を算出できることを理論と実験で示した.また,主系減衰や内部抵抗による精度の低下を抑制する方法として負性抵抗接続法と周波数応答重ね合わせ法を提案し,実験でその有効性を示した.


Figure 2.1  Inductance is coupled to a piezoelectric element.


Figure 2.2  Calculated and experimental results of frequency responses.

 研究成果3 圧電素子を用いた柔軟構造物のハイブリッド制振に関する研究
    圧電素子を用いた制振には能動制振と受動制振がある.しかし,能動制振は常にその発振の可能性が問題になり,受動制振は制振性能が低い.そこで,両者を合わせたハイブリッド制振の手法もいくつか提案されているが,それぞれの本質的な欠点を解決する手法はなく,単に同時に使用しているという域を出ない.そこで,本研究では圧電素子とLR回路を用いた受動制振の制振メカニズムを応用し,その制振力を増幅する新しいハイブリッド制振装置を提案した.装置に含まれるLR回路の最適値を定点理論にもとづいて導出し,理論計算で高い制振性能と回路の理論最適値の有効性を確認した.そして,実験で理論解析の妥当性を検証した.


Figure 3.1  Schematic diagram of the experimental apparatus.


Figure 3.2  Experimental results of frequency responses.

 研究成果4 圧電素子を用いた柔軟構造物のハイブリッド多モード制振
    はりや平板は低振動数域に限定しても複数の振動モードを持つため,一つの振動モードを抑えるだけでは制振性能が不十分となる場合がある.そこで,能動制振や多自由度回路を用いた受動制振のように複数の振動モードを抑えることができる手法が提案されているが,前者は発振の可能性等がある.また,後者は回路を多自由度にすることで,一つの振動モードあたりの制振性能が低下する.そこで,それらの問題を解決する手法として,本研究では圧電素子とアナログ回路を用いたハイブリッド多モード制振回路を提案した.この手法では各振動モードを抑える回路を並列化することでそれぞれの回路の最適調整と制振性能の調整が独立し,抑える振動モードの数が増加しても各振動モードの制振性能は低下しないことを示した.定点理論にもとづいて回路の最適値を導出し,実験によりこれらの理論解析の妥当性と本手法の有効性を確認した.


Figure 4.1  Schematic diagram of the experimental apparatus.


Figure 4.2  Experimental results of frequency responses.

 研究成果5 圧電素子を用いた制振システムの等価機械モデルと等価電気モデル
    圧電素子を用いた制振では制振対象物と制振装置がそれぞれ機械系と電気系で構成される.制振の原理を理解するためには二つのシステムを同時に考える必要があるが,そのままでは困難であるので,しばしば機械系と電気系のアナロジーが用いられる.しかし,これは完全に等価なモデルではないため,過去に機械系の装置や電子回路で得られている知見が活用されていない.そこで,本研究では圧電素子を用いた能動制振と受動制振の等価機械モデルと等価電気モデルを示し,理論的に一致することを証明した.また,複数の圧電素子を用いて制振する場合の等価モデルについても,それらを一組にまとめて使用する場合とそれぞれに制御器や回路を接続する場合に分けて等価モデルの導出方法を示した.等価モデルを用いれば,圧電素子を用いた制振に機械式の制振装置や電子回路で得られている知見を活用できると期待される.


Figure 5.1  Equivalent mechanical and electrical models for the passive vibration suppression.


Figure 5.2  Equivalent mechanical and electrical models for the passive vibration suppression model using LR series circuit.

 研究成果6 圧電素子と電子回路を用いた二重吸振器による受動制振
    圧電素子と電子回路を用いた受動制振ではLR回路を用いた手法の性能が比較的高いが,それでも能動制振に比べると制振性能が低く,ロバスト性も低い.これと同様の問題は機械式の動吸振器を用いた制振でもあり,機械式の装置では動吸振器系を二重にすることで問題を解決した.そこで,本研究では圧電素子と電子回路を用いた装置で,機械式の二重動吸振器に相当するモデルを示した.機械式の二重動吸振器には並列型と直列型があり,本研究ではその両方に相当するモデルを提案した.数値計算と実験を行い,ノミナルモデルで回路を最適に調整した場合は直列二重動吸振器に相当する回路の制振性能が高く,主系の固有振動数の変化を考慮して回路の調整を行った場合は並列型,直列型ともに従来の一重動吸振器に相当する回路よりもロバスト性が高いことを示した.


Figure 6.1  Models of dual electrical vibration absorbers.


Figure 6.2  Experimental results of compliance with and without considering robustness.